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NVIDIAから見たAI・ディープラーニングの市場の最前線、そして国内製造業における可能性とは【アペルザ限定公開中】
1993年に創業したNVIDIA Corporation(以下、NVIDIA)は、米国カリフォルニア州サンタクララにある半導体メーカーだ。同社の8割はエンジニアだ。半導体メーカーとは言いつつも、エンジニアの半数以上はソフトウェアエンジニアであり、「IT企業」と呼ぶほうがよいのかもしれない。今でこそ世界で約12,000名の従業員を抱える同社だが、この四半世紀で急成長を遂げている。2018年2月に発表された同社の通期決算、売上高は前年比41%増となる97.1億ドルだった。日本円にして1兆円を超える。
AIやディープラーニング市場における同社の存在感は大きいが、実は売上構成では「Gaming(ゲーミング)」が同55.1億ドル、つまりゲーム関連による構成比率が56%ほどとなっており、世界的に成長が続くゲーミング市場からの収益が最も大きく、その収益をその他の新領域へ投資をしているという形だ。AI・ディープラーニングもそのひとつだ。今回、アペルザカタログでは、同社日本拠点においてエンタープライズ事業部を統括する井﨑武士氏に、NVIDIAから見たAI・ディープラーニングの市場の最前線、そして国内製造業における可能性について話を聞いた。
-- 企画編集:株式会社アペルザ(聞き手:株式会社アペルザ 和田智之)
このカタログについて
ドキュメント名 | [独占インタビュー]AI・ディープラーニングを加速するGPUコンピューティング |
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ドキュメント種別 | ホワイトペーパー |
ファイルサイズ | 15.1Mb |
登録カテゴリ | |
取り扱い企業 | エヌビディア合同会社 (この企業の取り扱いカタログ一覧) |
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このカタログの内容
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AI・ディープラーニングを加速する
GPUコンピューティング
井﨑 武士
エヌビディア合同会社
エンタープライズ事業部 事業部長
1993年に創業したNVIDIA Corporation(以下、NVIDIA)は、米国カリフォルニア州サンタクララにある半導体メーカーだ。
同社の8割はエンジニアだ。半導体メーカーとは言いつつも、エンジニアの半数以上はソフトウェアエンジニアであり、「IT企
業」と呼ぶほうがよいのかもしれない。今でこそ世界で約12,000名の従業員を抱える同社だが、この四半世紀で急成長を遂げて
いる。2018年2月に発表された同社の通期決算、売上高は前年比41%増となる97.1億ドルだった。日本円にして1兆円を超える。
AIやディープラーニング市場における同社の存在感は大きいが、実は売上構成では「Gaming(ゲーミング)」が同55.1億ド
ル、つまりゲーム関連による構成比率が56%ほどとなっており、世界的に成長が続くゲーミング市場からの収益が最も大きく、
その収益をその他の新領域へ投資をしているという形だ。AI・ディープラーニングもそのひとつだ。今回、アペルザカタログで
は、同社日本拠点においてエンタープライズ事業部を統括する井﨑武士氏に、NVIDIAから見たAI・ディープラーニングの市場の
最前線、そして国内製造業における可能性について話を聞いた。
GPUコンピューティングの最前線 果が、2017年5月の中国の棋士、柯潔氏との対局で、3局全勝
を収めています。
―― NVIDIAと言えば、AIやディープラーニングの演算に用い また、世界的な画像認識のコンテストである「ImageNet」
られるGPU(Graphics Processing Unit)ですね。今、AI でも、ディープラーニングによる大きな変化がありました。
やディープラーニングの市場はどのような状況なのでしょうか。 同コンテストでは、参加者はAIを用いて静止画からオブジェ
クトを抽出して競い合っています。その抽出結果におけるエ
昨年ニュースでも話題になった「AlphaGo」はご存知で
ラーレート(誤答率)は、2012年頃までは10%前後でした。
しょうか。Google DeepMindが開発した「AI囲碁プログラ
それが2017年に入り、最高で2.25%という水準まで上がった
ム」です。過去にはチェスのAIプログラムなども存在しました
のです。人間のエラーレートが5%前後と言われていますので、
が、AlphaGoがそれらと大きく異なるのは、囲碁はチェスな
人間の認識率を遥かに上回ったと言えるでしょう。これも
ど他のボードゲームと比較しても圧倒的に局面のパターンが多
AlphaGoの例と同様、ディープラーニング、ニューラルネッ
く、想定される全局面のパターンを事前にプログラミングして
トワークが活用されるようになったことに起因します。
対戦させるということが難しいという点です。
―― 近年、AIやディープラーニングの技術は加速度的に進化
Google DeepMindでは、ここにディープラーニングを活用
している印象を受けますが、これにはどのような要因がある
し、局面のデータをハードコードするのではなく、用意された
のでしょうか。
大量の棋譜データを画像として学習し、その後プログラム同士
を戦わせることで、自ら学習を行わせました。その象徴的な結 大きくは3つの要因があると当時スタンフォード大学の人
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工知能研究所長であったフェイ・フェイ・リーが述べています。 扱う場合、1個のGPUでは時間がかかりますし、複数個にする
アルゴリズムの進化、ビッグデータ、そしてGPUの3つです。 場合も様々なパラメータをGPU間でやりとりしなければなら
ず、GPU間の通信速度によって全体のパフォーマンスが落ち
AIには冬の時代もありました。認識精度が実用レベルに上が
る可能性があります。ここにNVLink™ を用いることで、GPU
らなかったのが主な要因です。しかし、2010年頃から、アル
間の通信を300GB/秒の速度で行うことができ、全体のパ
ゴリズムの技術課題が解消し始め、AIのトレーニングに必要と
フォーマンスを落とすことなく、複数GPUによる並列処理が
なる大量のデータが入手可能となり、また、GPUの高速演算
可能になるのです。
性能により、開発期間が大きく短縮化されたことで、こうした
状況が変わってきました。 こうしたGPUやその周辺技術の進化により、複雑・多層の
ニューラル・ネットワークの演算が短時間で可能になり、冒頭
性能という点では、ムーアの法則という言葉を聞いたことが
で紹介したAlphaGoやImageNetのようなことが実現している
あるかもしれません。半導体の性能曲線が指数関数的に上昇す
のです。
ることを予測したものです。実は、CPUの性能向上について
は、既にムーアの法則が成立しなくなっているのです。これは
「量子効果」がその理由です。ムーアの法則では(微細化技術 製造業におけるAI・ディープラーニング
の進化により)「半導体の集積率は18ヶ月で2倍になる」と言
われていますが、この微細化技術が進みすぎると、半導体が熱 ――製造業についてはいかがでしょうか。
くなりすぎてしまい動作周波数を上げることができなくなりま
製造業におけるAI・ディープラーニングは市場としてはま
す。半導体の中は絶縁層がありますが、量子の世界まで行くと、
だまだ発展途上であり、決して成熟してはいません。国内で
「トンネル効果」により絶縁層からリーク電流が流れ、熱が発
もスタートアップを含む様々な企業が、クライアントの要件
生するためです。
を聞きながら構築に試行錯誤していくなかで、ようやく最近
2006年以降、市場に流通するCPUの「◯◯GHz(ギガヘル になり「こんなことができる」というものが具体化してきた
ツ)」などの数値はそこまで大きく変わっていません。では、 というのが現状だと考えています。
どのようにして処理能力を向上させているかというと、現在は
用途が広がりつつある分野としては、主には検査、メンテ
デュアルコア(2コア)やクアッドコア(4コア)など、複数コア
ナンス、制御などの分野が挙げられるでしょう。例えば、海
(CPUを複数搭載)にすることで処理能力を向上させている
外ではGE(ゼネラル・エレクトリック)社におけるプラント
のです。
の外観検査へのAI活用や、フォックスコン(鴻海)社では基
一方で、GPUは当初よりこの複数コアの設計コンセプトに 板の実装不良、半導体製造における検査などにAI・ディープ
立っており、最近のGPUではおよそ4,000から5,000コアに分 ラーニングの活用が始まっています。
けて処理を行っています。更に、当社のNVIDIA® NVLink™
国内では、ファナックやコマツの事例が有名かもしれませ
は、そのGPUを複数配置しての分散学習・並列処理における
ん。特に2015年12月の「国際ロボット展」でのファナック
「GPU間の通信速度」の課題も解決しました。
のデモンストレーションは記憶に新しいのではないでしょう
例えば、ひとつのモデル計算においても大量の画像データを か。これは、同社のアームロボットが金属製のワークをピッ
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キングするデモンストレーションでした。センサーで取得し
たワークの三次元画像データから、「ワークの取り出しやす
さ」を自動判別し、ピッキングします。ポイントはティーチ
ングを施していない状態から、8時間の機械学習のみで、ピッ
キング成功率を90%まで高めたという点です。ロボット
が自律的に学習し、与えられた仕事を行うという先行的な事
例となりました。
また、昨年の「GTC Japan」(2017年12月13日に開催され
たNVIDIA主催のGPUテクノロジーイベント)での基調講演で
は、コマツからスマートコンストラクションにおけるAI活用
が発表されました。具体的にはドローンカメラにより現場の
3D画像データを収集、地形データや、人や機械の位置を可視 ローンをはじめ、カメラやセンサーを使った情報認識や解析、
化し、工機・建機の管理、現場の安全性や生産性向上を図る 推論、計算処理など、自律型ロボットの性能を格段に向上させ
ものです。ここには当社のNVIDIA® Jetson™ が、エッジ側で られる可能性があります。また、このJetson™ Xavier™ を中
のAIコンピューティングのプラットフォームとして利用され 核とするのが、当社のロボティクス・プラットフォームである
ます。 NVIDIA® Isaac™ であり、同プラットフォーム上では、シ
ミュレーション環境も提供し、開発者がJetson™ Xavier™ を
―― 製造業におけるAIやディープラーニングの市場は、今後 用いたロボットのトレーニングやテストを行うこともできます。
どのように変化していくと考えられているのでしょうか。
これまでもAI・ディープラーニングによって様々な領域・業
これまではオンラインで学習も推論も行うユースケースが 界におけるソフトウェア・オートメーションが進んできました。
多く、世界最先端のデータセンター向けGPUであるNVIDIA® これからは、当社の製品を含め、より高性能なエッジコン
Tesla® V100 など、当社のGPUがオンプレミスやクラウド環 ピューティングが可能になることによって、より多くの生産現
境を含め、多くの研究者やエンジニアに利用され、その可能 場や工程において、カメラやセンサーとAIとが接続されること
性を広げてきました。一方、製造業の現場で活用されるAI・ で、マシンは自らの脳を獲得し、様々なインテリジェント・マ
ディープラーニングの推論環境としては、オフラインでの動 シンが生まれるのではないかと考えています。
作や設置環境の理由から、急速にエッジシフトが進んでいく
でしょう。 ――読者の方へのメッセージがございましたらいただけますで
しょうか。
一方で、画像センサやカメラの性能も上がってきています。
例えば、画像データの解像度が上がれば伝送されるデータ量 ディープラーニングの技術により、まさに第4次産業革命が
も当然膨れ上がりますし、そうした状況下では、エッジ側に 起こりつつあります。ボーダレス化が進む中、海外との競争を
もより高い処理性能が求められます。 避けて通ることはできません。正しい知識や理解をもって、自
社の課題に、迅速かつ最適なソリューションを選択することが、
2018年6月に発表した当社のJetson™ Xavier™(ジェット 今まで以上に大事になってきます。今回の特集企画においては、
ソン・エグゼビア)も、こうした高性能なエッジコンピュー NVIDIAのパートナー企業を始めとした、様々なソリューショ
ティングをターゲットとした製品のひとつです。同製品は世 ン・プロバイダも紹介されますので、まずは、自社の課題やAI
界初の組込型AIコンピュータボードで、90億個以上のトラン 導入のねらいから相談してみてください。
ジスタを搭載しており、30TOPS(30テラフロップス=1秒
当たり30兆回)の演算処理を行うことができます。 ――ありがとうございました。
これにより、従来型のSoCなどでは対応が難しかった、
エッジ側での多数のアルゴリズムを同時且つ高速な処理が可
能になります。インテリジェント・マシン、つまりAGVやド
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